第5章 「怖い」と感じた
「…真ちゃんは帰らないの?」
体育館の前には私と真ちゃんが残っていた。
真ちゃんは体育館の壁のもたれるようにして考え事をしているような表情だ。私はその横でしゃがみこんで膝の上で両肘をついた。
「そういう藍川は帰らんのか」
「んー、ちょっとね」
あんな正直言ってショボイやつと征十郎が一体何を話すのか気になった。
「藍川はどう思う」
「どうって何が?」
「彼のことなのだよ」
どうって言われてもね…。
何も。感想を述べるほどでもないわ。
「何も。真ちゃんはどう思うの?」
私が尋ねると真ちゃんはまた少し考えるようにして答えた。
「…以前、赤司は帝光のバスケは正攻法すぎると言っていた。それ故に奇襲などへの対応が遅れると」
「でもいつも対応できているじゃない」
「そうなのだが、その対応が手遅れだったらどうする?そこで赤司は流れを変える六人目が欲しいと言っていた」
「六人目ねぇ」
必要なの、それ。と私は続けた。
別に六人目がいない今の状態でも帝光は十分強い。これ以上強くなってどうするの、と征十郎に言ってやりたいが、おそらく彼は更なる高みを目指しているのだろう。
一体、お前は何になりたいんだ。
その時、体育館の扉が開いて征十郎が出てきた。
「緑間、華澄。聞いていたのか」
「お前が一目置いた奴がどんなものか気になったのだよ」
同じく。と言ってもほとんど中の声は聞こえなかったんだけどね。