第5章 「怖い」と感じた
は?
征十郎の視線の先に目をやると、征十郎同様、小柄な男の子が立っていた。…立っていた?え?いつから?
「あぁ…いつも一緒に練習してんだ」
大ちゃんが征十郎の問いに答えた。は?え?バスケ部?
「あれー。こんな人いたっけ?」
「一軍じゃねぇからな」
「ふーん、なーんだ」
「いや、私も知らないんだけど…」
今となっては一軍専属になってしまったが、入部当初は二軍や三軍の担当もやっていた。が、見たことがない。
途中入部かとも思ったが、そんな話は他のマネージャーからも一切聞いていない。
「ねー、もー行こーよー」
「…いや」
征十郎が考えるように言った。
「彼に少し興味がある。面白いな…初めて見るタイプだ」
はあぁぁあ?何考えてるの?冗談でしょ?
真ちゃんも私と同意見らしく、複雑な顔をしている。
「もしかしたら、俺たちとはまったく異質の才能を秘めているかもしれない」
そういわれて、目の前に立つ彼をまじまじと見た。
…いや、申し訳ないけどこれはないわ。
身長もそうだけど、体つきもさほど良くなさそうだし、全く才能の欠片も見受けられない。
さらに三軍体育館にいるということはおそらく彼は三軍なのだろう。しかし、三軍のなかでも彼は決して上手い方には入らないんじゃないか、とさえ思う。
「悪いが全員先に帰っててくれないか?彼と少し話がしたい」
征十郎に言われ、私たちは彼ら二人を残して、体育館を出た。
「そういえば大ちゃん、修ちゃんが探してたわ。まだ部室にいるかもしれないけど一応連絡入れといて」
「うぇ、まじか。わかった」
私が要件を伝えると大ちゃんは、着替えに部室の方へ向かっていった。
「じゃー、俺帰るねー」
あっくんもそのまま帰っていった。