第22章 絶対間違ってない
監督の言う通りに、大ちゃんはフェイクを三回入れ、ドリブルで彼を惑わし、アンクルブレイクで崩れさせた。
「相手が悪かったな。いや…お前じゃ相手にもなってねーか。俺に勝てんのは、俺だけだ」
大ちゃんがそう言ったのが、微かに私の耳にも届いた。
その言葉に少し心が痛んだが、大ちゃんの放ったボールはゴールをくぐる。
双子の間合い技術を破った帝光は、前半戦が嘘のように得点を重ねていき、第三クオーター終了時には14点差でリード。
「監督、もういいんじゃないでしょうか?」
「そうだな。もう十分やることはやった。青峰、黄瀬と交代だ」
私は口角を上げながら監督に言うと、監督も満足したようにして、あっさり大ちゃんと黄瀬を交代させた。
…昨日は、聞いてくれなかったくせに。この人は一体何を考えているのかしら?全くつかめないわ。
『第四クオーターを始めます』
「退場すんじゃねーぞ」
「わーってるッスよ!」
「げ!?」
アナウンスと同時にコートに出てきた黄瀬と、ベンチへ戻る大ちゃんを見て、こちらにも聞こえるほどの声で例の双子は漏らした。