第5章 「怖い」と感じた
まだ部室付近にいるのだろうと思い、職員室から部室へ向かう途中で、既に制服に着替えた征十郎、真ちゃん、あっくんに会った。
「早かったのね。今そっちに行こうと思っていたの」
はい、とデータをまとめたファイルを征十郎に渡した。
「にしても藍ちん、よくそんな面倒くさいことできるよねー」
あっくんがお菓子を食べながら、征十郎がパラパラとめくっているファイルを覗き込んだ。
「面倒だけど、楽しいわよ?」
「意味わかんなーい」
だろうね、と私は笑いながらあっくんに言った。
彼はバスケの才能は確かに凄いが、そのほかのネジは緩々だ。それでも勉強は私と並ぶほどにできるのだからそれも一つの才能なんだろう。
来週末の練習試合の対戦校について話しながら私は三人に同行して帰ることにした。
「……ぃねーよ」
まだ電気のついてる三軍体育館の前を通り過ぎようとしたとき、中から大ちゃんの声がした。
「青峰の声なのだよ。こんな所で何を」
真ちゃんが言った。
そういえば、前に三軍体育館で自主練をすると言っていたな、と思い出した。
まだやってたんだ、と思う反面、オーバーワークになったらどうするのよ、と少し眉間に皺を寄せた。
まあ、練習熱心なのはいいことなのだけど。そういうところは祥ちゃんにも見習って欲しい。
「青峰」
体育館扉を開け征十郎が入っていった。私たちもそれに続く。
「最近見ないと思っていたら、こんな所にいたのか」
「あー、向こうの体育館は人が多くて…」
「まあ、どこで練習してもかまわないが」
全くよ。
一言誰かに言って行って欲しいものだわ。あとで修ちゃんとさっちゃんに報告しておかなきゃ。
「彼は?」