第21章 もう知らない
すると、征十郎は私の前でしゃがみ込む。
「乗れ」
「え?」
「早くしろ。それとも虹村さんのように横抱きがいいか」
「乗ります」
私は征十郎におんぶされて、元来た砂浜を歩いた。
「…虹村さんとは、本当にただの従兄妹なのか?」
「?そうだけど…どうしたの?」
「なんでもない」
変なの。
いつもより少し高い位置から見える景色。
入学した時は私とさほど身長は変わらなかったのに、いつの間にか私より随分と背が高くなっていた征十郎。
私は征十郎の首元に顔を埋めた。
それがくすぐったいのか、征十郎はフッと笑った。
「あー、どこ行ってたんスか!」
「もう帰る時間なのだよ」
「ああ、すまない。華澄が足を挫いてしまったんだ」
「えー!?カスミン大丈夫!?」
「俺が運ぼーかー?」
「いや、俺が運ぶ」
征十郎が答えると、あっくんは少し口を尖らせたが、他の皆は私たちが仲直りしたことを察したのか、ニヤニヤと笑う。