第21章 もう知らない
食べ終われば、皆は消化も待たずにまた海水につかりに行ってしまう。
一方、私は、日差しが強くなる午後はあまり日陰から出たくないのと、食べたすぐに動くのが嫌で、パラソルの下でひとり皆の様子を見ていた。
「一人なんて危ないッスよ。はい、どうぞ」
「?あ、ああ。気が利くじゃない。ありがとう」
いつの間にかみんなの輪の中から姿を消していた黄瀬は、どうせまた逆ナンにでもあっているのだろう、と思っていたら、実は飲み物を買いに行っていて、そのまま私の隣に腰を下ろす。
「…何でさっき俺を選んだんスか?」
「さっき?」
「桃っちと一緒に助けてくれた時っス」
ああ、さっきのあれね…。
「征十郎が嫌だったから」
「だと思ったッスよ。おかげで、赤司っちの視線が痛かったし…。仲直りしないんスか?」
「うるさいわね。全中までにはどうにかするわよ」
「…まじで頼むッスよ」
黄瀬は大きなため息をつきながら言った。
そんなに私と征十郎の喧嘩は周りに迷惑をかけてるのかしら…。
「藍川っちは、赤司っちのこと好きなんスよね?」
!やっぱりこいつ気づいてた!!
私がバッと黄瀬の方を見ると、黄瀬は、やっぱり、と笑いながら呟いた。
「二人とも素直じゃないッスねー。うかうかしてたら誰かにとられてもおかしくないのに」
「そういう黄瀬はどうなのよ」
「俺っスか?俺は…今はないッスね。あ、でも藍川っちのことはいいな、って思ってるんスよ?」
「その冗談笑えないわ。次、言ったら…」
「冗談ッスよ!」
当たり前よ。
その後も黄瀬は私にどうでもいいような話ばかりしてくる。
さっさと皆と一緒に遊んできたらいいのに。