第21章 もう知らない
「「……」」
さ、最悪だわ!!なんてタイミングなの!!
私の前に立つ、不機嫌な顔のこいつの手には私と同じ”6”と書かれた紙。
いつもならばポーカーフェイスを装いながらも、内心は喜んでいたところだが、今回は状況が状況なためにそうもいかない。
「赤ちーん、嫌なら変わってよー。俺、藍ちんとがいーし」
「あ、くじの交換とか無しなー」
「げー、まじで…」
あっくんを主とした部員全員にそう言うようにしながら、修ちゃんは私を見る。
「(…は、嵌められた!)」
「じゃー、始めっか」
肝試しは、勿論三年生が脅かす役。
ルールも簡単なもので、この目の前の林の中をひたすら真っ直ぐ進み、先にあるという祠から私たちの私物をとって戻ってくるだけ。
というより、いつ私たちの私物を盗み出したんだ。
三年生は自分の定位置に付き、久保田先輩の声で、一年生から順に進んでいった。
「ぎゃあぁぁあああっ」
林の中からいくつもの悲鳴が聞こえてきた。
二年生に順が回ってくる頃には、先に行った一年生たちが戻ってきはじめていたが、皆ボロボロになっており、今にも泣きだしそうな子までいた。
「よし。やっと、大本命だな」
久保田先輩は満面の笑みで怯える大ちゃんと黄瀬を見た。
なるほど、楽しみは後に取っておくために、わざわざ私たちは最後に回されたのか。
「ま、やられても半殺し程度だから。行ってらー」
久保田先輩に背中を押された二人は、何も声を発することなく林の中へ消えていった。
暫くすると、大ちゃんの悲鳴が聞こえた。