第21章 もう知らない
「桃井から大方聞いた。で?お前はどーしたいんだよ」
「別に。どうもしなくていいわ」
「そーは見えねーけどな」
「……」
私の気持ちなど全て見透かしたように言う修ちゃんの視線に耐え切れず、私は目を逸らした。
「それより、あいつらが可哀想すぎんだろ。喧嘩するのはいいけどよ、周りを巻き込むんじゃねーよ」
「それに関しては私じゃなくて征十郎に言ってくれるかしら?私は普段通りに仕事をこなしているわ」
「久保田が、今日のテーピング少しキツイ、っつってたぞ」
…嘘、まじ?
怒りのあまりに、自分でも気づかないうちに力が入ってしまっていたようだわ。
「お前の気持ちもわかる。赤司に見られた上に、それで責められたのがショックだったんだろ?」
「どうしてわかるのよ」
「お前、俺を誰だと思ってんだ」
「頼りになる従兄のお兄様です」
私が答えると、修ちゃんは満足したような表情をして続けた。
「このままじゃいけねーって自分でもわかってんなら、今日中に仲直りしろ、とは言わねーからせめてどーにかする努力だけでもしろ。お前らがそんなんだと、こっちが気疲れで倒れるっつーんだよ。わかったか?」
「……」
「返事」
「…はい」
私の返事を確認した修ちゃんは、私の頭を撫でながら、また聞いてやっから、と残して体育館へ戻って行った。
「こんなのダメだってことくらい、私が一番よくわかってるわよ…」
昨日だって、征十郎は私を心配してああ言ってくれたってことくらいわかってる。
それでも、ショックな気持ちが大きすぎて、素直に謝れない。
ああ、もう本当に憂鬱だわ。