第20章 馬鹿っ!
さっちゃんに言われて私は初めてずぶ濡れになった自分の姿を確認した。
今日は曇りだったということもあり、上にパーカーは羽織っておらず、さらに運が悪いことに今日の私は真っ白のポロシャツを着ていた。
…ああ、なんてことなの。
昨日は真っ黒のポロシャツだったのに。
明日と明後日の分も白色はない。
何でこんな時に限って…。
私は衝撃的な事実を知って、見る見るうちに顔が真っ赤になっていく。
「お前たち、こいつらのことは任せる。華澄、行くぞ」
「え?ちょ、ちょっと」
こいつら、というのは間違いなく後輩三人のことで、任せるって…何?お、怒られちゃうの?
そんなことを聞く余裕すら与えられないまま、私は征十郎に手を引かれて、館内へ入っていく。
下着が透けていたという事実を知った今、廊下で部員たちとすれ違うたびに、とてつもない羞恥心に襲われるが、征十郎は止まる気配がない。
そして、ずんずんと館内を進んでいき、征十郎と真ちゃんが泊まっている部屋の前まで来て漸く征十郎は止まった。
「お前は馬鹿なのか。自覚を持てとあれほど言っただろう」
「なっ、雨に降られたんだもの、仕方ないじゃない」
征十郎は、ポケットに入っている部屋のカギをを出してドアを開ける。
「ほら、これでも羽織っておけ」
帝光のジャージを自分の荷物から取り出し、私に渡す。
「…濡れるからいいわ」
「早く羽織れ」
むぅ…。
言い方に少々腹は立つが、仕方なく、それを受け取って羽織った。