第20章 馬鹿っ!
それを適当にあしらいつつも歩いていると、ポツポツ、と雨が降り出した。
「降ってきた?!」
「げっ、まじか」
「先輩、走りましょ!俺らが荷物全部持つんで」
「そうね、お願いするわ」
後輩に荷物を持たせて私たちは、ひどくならないうちに、と走り出す。
が、何と言っても私は足が遅い。
「藍川先輩!早く!」
「うわ、ひどくなってきた…」
申し訳ない気持ちにはなるが、これでも精一杯だ。
仕方ないので、私たちは近くで雨宿りをして、雨が少しでも弱くなるのを待つことにした。
「うえぇ…びしょびしょ」
「皆、本当にごめんなさい…」
私がもう少し運動神経が良かったら…。
そう思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
これまで、散々征十郎たちから運動音痴、といわれてきたが、ここまで気にしたことはない。
「気にしないでくださ…い…って!」
「?どうかしたの?」
ふと私を見た後輩の一人が、みるみる内に顔が真っ赤になっていく。
「あ、あ、あ、藍川先輩!!」
「ちょ、ちょっと鼻血が出てるわ。どうしたのよ?」
「いや、その…」
「馬鹿!今言うべきじゃねーって!」
「?」
三人の後輩たちは私をまじまじと見ながら、顔を真っ赤にしていく。
とりあえず鼻血を流している彼にはポケットに入っていたびしょびしょのティッシュを渡す。