第20章 馬鹿っ!
まだ休憩でもないのに、修ちゃんは私たちの元へ近づいてきてはそんなことを言い出す。
「可愛い従妹が日焼けでもしたらどうするのよ。それにこれは私の熱中症対策でもあるの」
「ひとりだけ雰囲気おかしいだろ。ほれ、俺のキャップ貸してやっから」
そう言うと、修ちゃんは自分の被っていたキャップを私の頭に被せる。
「虹村さん、結構です。俺のを貸すので」
どこからか沸いてきた征十郎が修ちゃんがたった今私に被せたキャップをとり、自分のを私に被せる。
「ほお…、ふーん」
そんな様子を見た修ちゃんは意味深は笑みを浮かべたかと思うと、征十郎に返されたキャップを被って、また練習の輪のなかへ戻って行った。
「華澄、これを貸すから日傘はしまっておけ」
「征十郎が熱中症になるじゃない」
「そうならないよう、お前が見てくれるんだろう」
「……」
私の無言を了承と捉えた征十郎は、満足げな笑みを見せて、修ちゃん同様に練習へ戻って行った。
「カスミン、顔真っ赤だよ?」
さっちゃんはフフッと笑いながら私を見る。
「意味が分からないわ」
私は赤くなった顔を見られないようにキャップを深く被り、下を向いた。
「(…というか、このキャップちょっと汗臭い)」
練習は夕方まで続き、私は約束通り早めに切り上げて皆の夕飯の支度へ向かった。
この日は誰も倒れることなく、食事も無事に終えることができた。