第4章 深く考えるのは止そう
昼間は夏かと思うほど暑かったにもかかわらず、やはり夜になれば、少々冷える。
「…っくしゅ」
「寒いか?」
「大丈夫」
大丈夫だと答えたのに、征十郎は自分の羽織っていた上着を私にかけてくれる。
「い、いいわよ。征十郎が風邪ひいちゃう…」
「そんな軟ではないよ。それより見てごらん」
「?」
征十郎に促され、何かあるのか、と空を見上げた。
「うわぁ、凄い…」
そこには私たちが住む、所謂都会では決して見られないような星空があった。
「これを見れば、少しは気分も晴れるんじゃないかと思ってね」
征十郎は私に微笑みかける。
「…ありが、と」
私は胸が少しキュッとなり、それと同時に照れくさくなって下を向いてしまった。
「(あら…?そういえば、今日あの時…)」
どうして私は心の中で征十郎の名前を呼んだのだろう。
ちらり、と隣の彼を盗み見るが、わからない。
「(…まあ、いっか。深く考えるのは止そう)」
そうして、次の日の遠征最終日は普段通りに仕事をこなし、長時間バスに揺られ、初めてのゴールデンウィーク遠征は幕を閉じた。