第4章 深く考えるのは止そう
『少し出てこれるかな』
その日の試合を終え、宿泊所での夕飯や洗濯、ミーティング、念のための大ちゃんの足首のチェック、といったことを全て終わらせたときに征十郎からメールが入った。
今日のお説教だろうか。
それならさっきミーティングの後で散々修ちゃんにされたところだ。いつもならろくに聞きもしないが、今回は私が悪いとハッキリわかっているので、黙ってそれを聞いていた。
「今日は仕方ないわね」
私は征十郎に『うん』とだけ返し、自室を出て、フロントへ向かった。
そこには既に征十郎の姿があって、片手で頬杖をつき、もう片手で本を持ち読んでいた。征十郎はすぐに私に気づき、本を閉じ、こちらへ向かってきた。
「今日はご迷惑をおかけいたしました」
怒られる前に謝っておこう、と私にしては珍しいほど深々と頭を下げた。
実はこれは先程修ちゃんにもしてきたばかりだ。
「華澄が無事で何よりだよ。だが、これから気を付けるんだ」
「はい、ごめんなさい」
征十郎は私の顔を見て、優しく微笑み、頭を撫でてくれた。
「それより、少し外に出ないか?」
「え?」
てっきり、お説教だと思い込んでここに来たのだが、ここではできないほどに怒るつもりなのか。
あの修ちゃんですらまだ館内、というか、廊下だったのに。
廊下で怒鳴り付けられたおかげで周りの視線がとてつもなく痛かった。
「行こう」
私の手を引いて征十郎は外に出る。