第19章 優勝する気あるの?
きっとここにいたのがさっちゃんだったら、少しは違う展開になっていたのではないか、と本気で思う。
「…大ちゃんを、お願いします」
私が頭を下げて、テツ君にお願いすると、テツ君は私の頭をそっとあげるようにして、私の顔を見た。
「それ、さっき桃井さんにもされてしまいました」
「さっちゃんが?」
「はい。やはり幼馴染ですから、心配なのでしょう」
そうよね、私だけじゃないわよね…。
さっちゃんなら余計に心配しているはずだわ。
「大丈夫です。青峰君ならまた笑ってくれますよ」
優しく微笑みながらテツ君は言ってくれる。
テツ君が言うと、なんだか大丈夫な気がしてくる。
「それと、藍川さん。赤司君が早く戻ってこい、と言っていましたよ。藍川さんがいないとミーティングが終わるに終われない、と」
「あ」
ミーティングが始まる前に抜け出して大ちゃんを追いかけた私は、今日のスコアこそさっちゃんに預けたが、アイシングやケアの指示は私がいないとできない。
それを行わないと、皆帰れないわけで…。
「怒られちゃうわ…」
「早く戻りましょう?」
クスッと笑うテツ君に促され、私は皆がミーティングをしているであろう、控室へ戻って行った。
その後、珍しく征十郎からのお叱りはなかったが、修ちゃんにはいつものデコピンを食らった。