第19章 優勝する気あるの?
そう小さく呟いて、大ちゃんは私に背を向けて帰ってしまった。
「…藍川さん」
去っていく大ちゃんの背中を見つめ、私はなんて無力なんだろう、大切な仲間すら救ってあげられない。
そんな思いから堪えていた涙が溢れ、ひとり泣いていた。
その時に、後ろから躊躇いがちな声がする。
「テツ…君…」
「泣いているんですか?」
私は首を振り、否定しながら涙をぬぐった。
「あの…。青峰君のことは僕に任せてもらえませんか?」
「え…?」
顔をあげテツ君を見ると、いつもの無表情とは少し違う、優しい笑みを浮かべて私に言う。
「僕にできるかどうかはわかりませんが、僕が彼を救ってあげたいんです。…青峰君は、僕の相棒ですから」
「テツ君…」
ね?ととでも言いたげに私に同意を求めるように微笑むテツ君を見て、私は思わずまた涙がこぼれた。
「そんなに泣いていたら、赤司君が心配しますよ?若しくは僕が泣かせたのか、と責められてしまいます。それだけは遠慮願いたいのですが…」
「…ふふっ。そう、ね」
征十郎なら言いかねない。テツ君が征十郎に責められる光景を想像して、少し笑ってしまった。
「…テツ君。私、役立たずでごめんなさい」
「何を言ってるんですか」
去っていく姿を泣きながら見ることしかできない。