第19章 優勝する気あるの?
「待って!大ちゃんってば、ねぇ!」
その日の試合終了後、ミーティングにも出ずにひとりでそそくさと帰ろうとする大ちゃんを私は追いかけていた。
「…あんだよ」
「何だよ、じゃないわよ。ミーティングには出ないの?」
「出たとこでどーせ明日も勝つんだろ?俺は点さえ取ってりゃいーんだしよ」
「そんな言い方…!」
征十郎から言われたノルマの一件から、普段は変わらないが、バスケのこととなるとなんというか…、大ちゃんは凄く投げやりになる。
「ノルマのことが嫌なら、私から征十郎に言うわ。だから…」
「んなこたーどーでもいんだよ」
まるで突き放すような冷たい目で大ちゃんは私を見る。
その視線に耐えられず、私は少し言葉を詰まらせた。
「……っ…ねぇ。どうやったら…、どうやったら前みたいに笑ってくれるの…?」
じわじわと目に浮かんでくる涙がこぼれないように、でもしっかりと大ちゃんを見て言った。
「一番苦しいのは大ちゃんだってわかってるわ。私の力不足なのも。…だけど、私はやっぱり大ちゃんには笑ってバスケをしてほしいの…」
笑えって強制はしない。
お願い、だなんて言わないから。
せめて教えてよ。
どうやったら大ちゃんはまた、楽しそうに笑ってバスケをしてくれるのかを。
「…お前じゃどーにもできねーよ」
――「俺でもどーしたらいいのかわかんねーんだから」