第18章 形無しだわ
「…本当に早かったわね」
「約束したじゃないか」
将棋の大会は本来ならもっと時間がかかるものだったらしいのだが、征十郎が圧倒的な強さを見せつけ、あっという間に終わった。
勿論、優勝は征十郎だ。
現在彼の手には優勝賞品のお菓子の詰め合わせがある。
「ほら、いちご飴買うんだろう?」
「うん」
そこまで待っていないし、今日誘ってくれたことだけで私は十分でもあったが、約束は約束。
私は征十郎にいちご飴を買ってもらい、また二人で色々見て回った。
「お。赤司に藍川じゃん」
「何!?華澄だと!?」
げ。
今日もっとも会いたくない集団に会ってしまった。
私たちを見つけた帝光バスケ部三年生集団はこちらへと向かってくる。
その中には勿論、修ちゃんもいるわけで。
「征十郎、逃げるわよ」
「は?」
何で?と聞きたげな征十郎の手を引いて、修ちゃんたちとは逆方向に歩き出す。
「オイ、コラ!華澄に赤司!逃げんなっ!」
「華澄、虹村さんがああ言っているが…」
「ああ言われて捕まるほど、私も馬鹿じゃないのよ」
私の言っている意味がさっぱり分かっていない征十郎だったが、少ししてまたクスッと笑い、私と一緒に修ちゃんたちから逃げてくれた。
修ちゃんたちもこの人混みに揉まれて、思うように進むことができなかったのか、案外簡単に巻くことができた。
「一体何があったんだ?」
「…内緒」
ひとまず、修ちゃんたちから距離は取ったところで一旦止まると、征十郎は尋ねてくる。
が、冷やかされるからなんて言えるわけがない。
そしてまた二人で見て回っていると、あっくんと約束した時間も近づいてきた、ということで、あっくんと待ち合わせて、私たちはそちらへ向かった。