第18章 形無しだわ
「面白そうな対戦相手がいるのですか?」
「さあ…」
テツ君が尋ねると、征十郎は目を細めて楽しそうに笑った。
帝光祭の時に見た表情だ。
「(…これもぶっ潰すつもりね)」
まあ、今日は早くぶっ潰してもらった方が私も嬉しいのだけど。
そして、腕時計をちらりと見て、時間を確認すると、征十郎はあっくんを見て言った。
「そろそろ始まる時間だ。…紫原、後で連絡する。華澄、行くぞ」
「うん。よろしくねー」
「あ、待ってよ」
私と征十郎はあっくん、テツ君、さっちゃんと別れて、再び人混みの中へ入って行った。
将棋の大会会場に着き、征十郎は用意されたステージに行ってしまったので、私は仕方なく、ひとり観客席に座った。
正直、ひとりは心細いというのもあったが、なんせここは平均年齢があまりにも高く、私と征十郎は少々浮気味だ。
だが、これまでのような変なことには巻き込まれそうにもないので、私は大人しく、わかりもしない将棋を見ていた。