第18章 形無しだわ
テツ君はこの人混みの中で自分の存在をアピールするように手を振っていた。
そして、おそらく、まだ私と征十郎の姿は見えていない。
「あ、黒ちんだー。あれ、さっちんもいるんだねー」
テツ君に気づいたあっくんは人混みをかき分けてそちらに向かうので、私たちもあっくんの背中を追いかけた。
「黒子、桃井。こんなところで会うとはな」
「わあ、二人ともすっごく浴衣似合ってるわ」
というより、いつもならさっちゃんの隣にいそうな大ちゃんがいないということは、さっちゃんはテツ君とデート中ってこと?
さっちゃん、なかなかやるわね…。
「赤司君と藍川さんも紫原君と一緒に遊びに来たんですか?」
「ううん。この二人は一緒だったけど、俺はたまたまそこで会ったんだよー。赤ちんは、これから将棋の大会に出るんだってー」
「将棋の大会?ここでやってるの?」
あっくんがそう言うと、さっちゃんは首を傾げて征十郎に尋ねる。
「知り合いに出てくれと頼まれたんだ。参加者を確保したいらしい」
「酷いでしょう?征十郎から誘って来たのに、結局将棋しちゃうのよ?」
「それはいちご飴を買ってやるということで解決しただろう」
征十郎の言葉に、私はわざとらしく頬を膨らませてテツ君とさっちゃんを見た。