第18章 形無しだわ
あっくんは私に視線を移すと、じっと私の姿を見て、少し顔を赤くした。
「藍ちん、すっげぇ浴衣似合ってる。かわいーよ」
「ありがとう。あっくんも甚平似合ってるわ」
褒められるのが嬉しくて、私はあっくんに微笑みかけた。
「そうだ」
征十郎が何か思いついたようにあっくんを見上げて言った。
「俺はこれから将棋の大会に出るんだが、優勝賞品の中に菓子の詰め合わせがあるんだ。いるか?」
「まじ!?いる!」
あ、優勝することが前提なのね。
まあ、あなたが負けるところなんて想像もつきませんけど。
「あら?じゃー、赤ちんが将棋してる間、藍ちん何してんのー?」
「見てるの」
「それ面白いの?」
面白くはないでしょうね。ルールもわからないし。
「その間、俺と回るー?」
あっくんの誘いに私は、うーんと小さく唸る。
大会が終わった後、征十郎とあっくんは待ち合わせて会うだろうし、あっくんと回ってもいいのだけど、この人混みをあっくんの食べ放題ツアーに連れまわされるのもちょっとな…。
「折角だけど、征十郎を見てるわ」
「あ、そー」
あっくんに断りを入れて、三人で時間まで少し回ることにしてまたブラブラと歩いていると、人混みの中から、これまた聞きなれた声がする。
「紫原君」
振り向けば、黒地に縞模様の浴衣を着たテツ君と淡いえんじ色に花柄の浴衣を着たさっちゃんがいる。