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青春あやまち論 【黒子のバスケ】

第18章 形無しだわ



その日の部活。

私は昼休みのことは誰にも触れず、帰り道にでも思い切って征十郎を夏祭りに誘ってみよう、と意気込んでいた。


「華澄、ちょっといいか」


練習の休憩中、征十郎に呼ばれた私は、征十郎と体育館を抜ける。


「どうしたの?」

「悪いが、今日は緑間か虹村さんと一緒に帰れるか?用があって送れないんだ」


…えぇぇええ?!


何ということなの。

折角、意気込んだのによりによってどうして今日一緒に帰れないのよ…。

明日でも誘えるだろうが、あっちゃんに言われた勢いで今日言ってしまおうと思っていたのもあって、明日には言えない可能性もなくはない。


「…わかったわ。今は夏だし、外も明るいから一人でも帰れるから大丈夫よ」


真ちゃんは今日はいつも以上に疲れてるから無理でしょ。

というより、もう誰かと一緒に帰る気力すらない。今すぐにでも帰りたい気分。

あーあ…と項垂れていた私に、征十郎は「それと、もう一つ」と続けた。


「今度の夏祭りなんだが、もう誰かと約束したか?」

「…え?」


夏祭り?


「まだだけど…」

「そうか。ならば、一緒に行かないか?」


一緒に?行かないか?

征十郎の言葉を一つ一つ頭の中で理解していく。


「え!?い、いいの…?…都大会の一週間前よ?」

「偶には息抜きも必要だろ?華澄が嫌でなければ、是非」


征十郎は私に微笑みかけながら言った。

そんなの嫌なわけないじゃない!寧ろ一緒に行かせてください、ってお願いしたいくらいだわ!


「行くっ」


珍しく声をあげた私を見て、征十郎はクスッと笑った。


「では、家まで迎えに行くよ。時間はまた後で連絡する」

「うん!」


征十郎は、私の頭を撫でてから体育館へ戻って行った。

ああ、私も征十郎の前では形無しだわ。

本当に自分でも信じられないほど普通の女の子になってしまう。


「…浴衣、どれにしようかしら」


思わず緩んでしまう口元を押えながら、私も体育館へ戻った。

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