第17章 仕方ないわよね…
「…彼らに全力を出すことを禁止して欲しい」
「禁止…?…で、ですが、監督はどんな相手でも全力で、と…」
「そうだ。だがそれは今の時点での話だ」
「……」
監督の言いたいことはわかる。
私も皆が体を壊すくらいなら、少しでもセーブしてプレイした方がいいとは思う。
そして、これは身体管理を行う私にしかできない。
「酷なことを言っているのは重々承知だ。それでも君にしか頼めないんだ。この先、”その時”が来たら、引き受けてくれるね?」
「…まるでこの先監督はいなくなる、ような言い方ですね」
私が言うと、監督は困ったように笑う。
…私の予想が正しければ、監督は何か病気を患っている。
だから、このことを私に話すということは、自分がいなくなった時の保険なんだろう。
「わかりました。私にできることはやります」
「助かるよ。頼んだよ、藍川」
監督は私の返事を聞くと、私の肩をポンと叩いて相談室を出て行った。
「…私にできること」
また一つ仕事が増えた。
それでも、彼らのために、私にしかできないこと。
重荷に感じてはダメだ。
私が、支えなくてどうするの。