第4章 深く考えるのは止そう
ば…、
ばか、バカ、馬鹿っ!!征十郎にその言葉だけは言っちゃダメなの!!
そんな私の思いなど知るはずもないこいつは、征十郎に殴りかかろうと前に出た。と、したのだが、何故か男は前のめりに倒れていく。
見てみれば、なんと大ちゃんがシラっとした顔で彼に足をかけていたのだ。
だが、倒れていく彼は私の腕をつかんだままだったために私
まで体が傾いていく。
「(転んじゃう…!)」
と目を強く瞑った瞬間。
トン、とわずかな衝撃とともに少し汗の混じった優しい香りに包まれる。
目を開ければ、よく見慣れた顔があった。
「征、十郎…」
「怪我はないか?」
コクリ、と頷いた。
私が転んでしまう寸前に征十郎が受け止めてくれたようだ。
「このやろ…、舐めやがって!」
「あ?何か言ったか?」
大ちゃんが今にも襲い掛かりそうな彼に向って睨みをきかす。
それを見た二人は、一瞬ひるんだような表情を見せる。
「せんぱーい、ここは俺の出番だよなー?」
「何嬉しそうな顔してんだ。っつっても、俺も可愛い従妹に手ぇ出されちゃ黙ってらんねーな」
祥ちゃんと修ちゃんが手をボキボキと音を鳴らしながら彼らの前に出た。
「ちょ、ちょっと待て。俺ら何もしてな…」
「そ、そうだよ。道聞いてただけだろっ」
前に立ちはだかる二人の顔があまりにも凶悪すぎて恐怖したのか、二人組の彼らは慌てだす。
「ちょっとー、藍ちんいたのー?」
間の伸びた声がし、その方向を見てみれば、あっくんと真ちゃんがこちらに向かってきていた。
ずんずんと近づいてくる大男に彼らは、ひぃっ、と小さな悲鳴を上げる。
「藍川、大丈夫なのか?」
「う、うん…」
「てか、この人たち誰ー?」
真ちゃんの問いかけに小さく返事をすると、あっくんは腰の抜けた彼らを見下ろす。