第16章 やめときな
その翌日、さっちゃんは大ちゃん、真ちゃん、黄瀬と二軍の試合同伴していた。
しかし、そのまた翌日に試合がどうだったかを尋ねると、さっちゃんはあまり浮かない顔をしていた。
「青峰君、日に日に上手くなっていくんだ…。ホント、怖いくらいに」
さっちゃんは征十郎に提出する試合データを、私に最終チェックをしてもらい、帰り道にそう言った。
「そう…。確かに、大ちゃんは元々才能はあるのだけど、最近は特に、ね」
オーバーワークにならないか心配になるほどの動きをして見せる大ちゃん。
毎日念入りに身体チェックはしてみるのだが、特に異常はなく、それが余計に私を不安にさせていた。
「あ」
さっちゃんが不意に声を出し、真っ直ぐ見つめたその視線の先には、テツ君。と大ちゃん。
「あ、待っ…」
「テツくーん!」
「ぐ」
「遅かったわね」
こうなることを予見し、さっちゃんを止めようとはしたが間に合わなかった。
テツ君は今にも押しつぶされそうである。
「全く…、何やっているのよ」
「なんかテツに急にグイグイ来るようになったな、さつき。黄瀬といいどいつもこいつも…」
私は、前方の三人のところへ向かい、大ちゃんと二人で呆れた表情を見せた。
「だってー。我慢できないんだもんー」
「すみません。早くどいてもらえますか」
テツ君の死にそうな声が聞こえた。