第16章 やめときな
そして、練習後。
私がひとり片づけをしていると、例の二人にテツ君、征十郎、大ちゃん、黄瀬が残って、テツ君の言う証明を始めるようだった。
「…3対3!?」
「はい。このチームで先に10点取った方が勝ちです」
おお…、なるほど。テツ君も考えたわね。
これでチームワークの大切さを二人に身をもって教えるということ、でいいのかしら。
「征十郎、勝っちゃだめよ」
「俺だってそのくらいわかっているさ」
3対3が始まる前に私は、征十郎にそっと耳打ちをすると、征十郎は私に微笑みかけて、ボールを持って、彼らのなかへ行った。
片づけをしながら私は、その様子を横目で見ていた。
「決まったー」
「やはりこうなったか!」
彼らの様子を見ていたのは私だけではなく、残って自主練をしていた部員たちも全員見ていた。
勿論、勝っているのはテツ君、大ちゃん、黄瀬チームだ。
と、テツ君がゴール下にパスを出した時。
「「え?いてっ」」
大ちゃんと黄瀬が思いっきり衝突。
「いってぇー。何やってんだよ黄瀬ぇ!今のはテツから俺のリターンだろ!?」
「何でっスか!どー考えても俺へのパスだったじゃないスか!」
「はあ!?俺だろ!」
「俺ッス!」
「何故お前らも喧嘩を始めるのだよ!?」
…何で?
その様子を見ていた者は皆そう思ったに違いない。
「…もう。本当に馬鹿なんだから」
テツ君が一軍に来てから、本当に空気が変わった。
私はあんな止め方しかできないけれど、彼の手にかかればこんなにも違うんだな…。
仲がいいのか悪いのかわからないけど、私はこのチームが本当に大好きだな、と感じた。