第4章 深く考えるのは止そう
「華澄ちゃん、お昼食べないの?」
お昼に、と配られるお弁当を受け取らずに、施設の外へ出ようとする私にエリカさんが声を掛けた。
「大ちゃんのバッシュの紐が切れちゃったんで買いに行きます」
「私も行くわ」
「いえ、エリカさんまでいなくなったらマネージャー誰もいませんよ。すぐ戻ってきますから」
「そう。何かあったら連絡してよ?」
「はい」
一応、主将か修ちゃんにも言っておこうかと思ったが、コーチと何やら話し込んでいるのが見えたので、すぐ戻ればいいか、と思い、スポーツショップへと向かった。
*
スポーツショップまでの道順は、私が記憶していた通りで(と言ってもひたすら真っ直ぐ)、大ちゃんご所望の黒い紐を購入して、彼はこれ以上黒くなってどうするんだ、と失礼なことを考えながら、難なく施設へと元来た道を戻っていた。
しかし、それは施設まであと少し、というところで起こった。
「君、超かわいいじゃん」
「ここらじゃ見かけない顔だね」
高校生くらいだろうか、制服を着た二人組の男の子に声を掛けられた。
またか…と思いつつも、経験上ろくでもないことに巻き込まれかねないことは重々わかっているので、私はいつものように無視を決め込む。
「あれ?無視?」
「えー、俺ら傷ついちゃうなー」
勝手に傷ついてろ。そしてそのまま息の根が止まるといい。
「はーい、ストップ」
私があまりにも無視するからか、その二人は私の前に立って、とおせんぼ、と両手を広げる。
…ガキかよ。
それでも私は彼らを視界にも入れずにそれを避けて進もうとした。
「あんま調子乗んじゃねーぞ」
「やっ」
私の態度が気に入らなかったのか、ひとりが私の腕を強く引っ張った。
「はい、捕まえた」