第4章 深く考えるのは止そう
「とりあえず十五分冷やして、それからテーピングをどうするか考えるから」
「バスケしてー」
「午後には戻れるようにするから大人しくしてよ」
私がそう言うと、大ちゃんは顔をパァっと明るくさせ、まじ!?と聞いてくる。
「言ったでしょ?捻ってはないって。一時的な痛みだと思うし、大丈夫だろうけど、念のため少し様子見ね」
「さすが華澄だな」
嬉しそうに笑う大ちゃんを見て、自然と私も笑う。
が、それも一瞬で消えることとなる。
「…大ちゃん。左のバッシュ、紐切れてるわよ」
「あ?」
大ちゃんは寝ころんだ姿勢のまま左足をあげ自分のバッシュを確認する。
「まじかよ。さっき着地した時に切れたんか」
「何やってんのよ。予備は?」
「持ってきてねーよ」
持ってきておきなさいよ。
一応マネージャーの道具のなかも探してみるが、生憎予備の紐は見当たらない。
「こっちもないわ」
「仕方ねーな。このまま出るか」
「また怪我するつもりなの?」
本当に馬鹿。
「次、一時間昼休みとるでしょ?私が買ってくるわ」
ちょうど昨日買い出しに行ったおかげで、近くにスポーツショップがあることは知っているし、道だって確かずっと真っ直ぐだったはずなので大丈夫だ。
「悪りぃし、俺が行くぜ?」
「大ちゃんは少しでも安静にしてなさい。試合に出たいんでしょ」
「あー、じゃあ頼むわ」
その時ちょうどブザーが鳴り、午前中のゲームが終わった。