第16章 やめときな
やっぱり、と私が思っていると、私に用があったらしいさっちゃんが一軍の体育館に入ってきた。
さっちゃんは体育館に入った途端にこの空気の悪さに気づき、大ちゃんに問いかける。
「ちょっ…どうしたの!?」
「さつき。どうもこうもねぇよ。また紫原の悪い癖が出ただけだ」
大ちゃんはため息をつきながら答えた。
大ちゃんの言う、あっくんの『悪い癖』で全て把握したさっちゃんもまた、小さくため息をついた。
「もうっ!ムッくんは何でそーゆーこといつも…。私、探してくる!」
「やめときな」
私は、さっちゃんが出て行った彼を追いかけようとするのを止めた。
「戻ってくる人は戻ってくるわ。人に言われて辞めるくらいならどの道長くは続かないし、ここはそんなに甘いところじゃないのよ」
「藍川の言う通りだ。事実、それでも黒子は一軍で生き残っているだろう」
私と真ちゃんがそう言うと、さっちゃんは、そうだね…と呟き、その場に留まった。
「バスケが好きで上手くなるために努力する、それの何がいけないんですか?」
コートの真ん中ではいまだテツ君とあっくんが睨みあっている。
「いけないよ。無意味じゃん。頑張れば誰でも夢は叶うとでも思ってんの?努力が実るとは限らない、そんなもん常識でしょ」
あっくんは冷たく言い放った。