第16章 やめときな
「…紫原のいつもの悪い癖なのだよ」
「え、まさか…また?今度は何を言ったの?」
「詳しくは聞いてない」
最近あっくんと仲がよろしくない真ちゃんは、「全く、どうしようもない奴なのだよ」と、平然と練習を続けるあっくんを睨みつけた。
「俺、聞いたッスよ。なんか…『イラつくんだよね』とか『その程度の才能で頑張れば何とかなるとでも思ってんの?』とか『やめた方がいいんじゃない』…って言ってたッス」
「はあ…」
黄瀬から聞いた詳細に私は頭を抱えてため息をついた。
「え、あれ?黒子っち?何やってんスかね?」
黄瀬が驚いたような声をあげ、そちらに目を向けると、コートの真ん中でテツ君とあっくんが睨みあっている。
「今度は何なのよ…」
大方、テツ君が先程のことであっくんに申し立てでもしているのだろう、と私は二人を見た。
「ヒネリつぶすよ、黒ちんでも。俺なんか間違ったこと言った?」
「あそこで言う必要はありませんでした」