第14章 真面目に聞いているの
テツ君がさっちゃんに連れられて戻ってきたのは、練習が始まってからのこと。
祥ちゃんは本当に辞めてしまったらしい。
「…どうしてあんなことしたの」
休憩中に私は皆から少し離れた位置で征十郎に問いかけた。
「あんなこと、とは?」
「祥ちゃんを退部させたことよ」
これまで部活をサボったり遅刻したりしても、祥ちゃんは退部だけはしなかった。
と、なれば考えられる可能性は誰かに強制退部させられた、ということ。
そして、それができる人物はただ一人。
「珍しいな、華澄がそんなことを言い出すなんて。何か灰崎に思い入れでもあったのか」
「私は真面目に聞いているの」
征十郎は少しからかったようにして言うので、私は怒った声で彼を少し睨んで言った。
征十郎は私が怒っていることを察してか、真剣な口調で話し始めた。
「…黄瀬はもう間もなく灰崎を抜いてスタメンになる。そうなればプライドの高いあいつは更に部活には来なくなるだろう。遅かれ早かれ、あいつはいなくなる」
「…しかも、黄瀬の控えには間違いなく修ちゃんが選ばれる。…だからもう用済み、ってことなの?」
「それだけではない」
征十郎は続けた。
「灰崎の素行の悪さは最近特に目に余る。つい先日も他校の生徒と喧嘩したそうだ。これ以上部にとって害でしかない」
納得したか、というように征十郎は私を見た。
勿論、そんな理由で私が納得するはずもなく、私は征十郎から目を離して、異常なスピードで成長する奴の姿を見た。