第12章 馬鹿とは何よ
ちょ、ちょ、ちょ、ちょおおっと、待って?!
何?このあっくんや修ちゃんに抱きしめられるのとは違う感じ!
え?私ってそんなに危なっかしいの?子ども扱い?これってそういうことよね?!
ていうか、心臓落ち着いてよ!
征十郎に伝わったら変に思われるじゃない!
「え、えっと…。わかったから、離して?」
「……」
征十郎は黙ったまま私を離そうとしない。
「征十郎?もう練習に戻らなきゃ。だ、誰かに見られちゃうわよ?」
「…構わない」
私は構うんだけど…。
「…どうしたの?何かあったの?」
私が尋ねても征十郎は何も言わない。
…もしかして、この暑さにやられた、とか?
でも、見るからにそんな様子は微塵も感じないんだけど…。
「征十郎ってよくわからない」
「…俺が?」
「うん」
私は征十郎に抱きしめられたような態勢のまま言った。
「いつも私が困っていたらさっきみたいに助けてくれる。かと思えば、こんな風なことしてきたり。…わからないわ」
私がそう言うと、征十郎は困ったように笑って、漸く私を離してくれた。
「相変わらずだね、華澄は」
「ますますわからないんだけど…」
「わからなくていいよ」
そう言いながら征十郎は私の頭を撫でて、戻ろう、と言って体育館へと入って行った。
「(…一体何だったの?)」
それと、何この動悸…。征十郎に頭を撫でられるときはいつも感じる。修ちゃんとは違う安心感。
全くわかんない。