第12章 馬鹿とは何よ
しかし、こちらを振り返ったその顔は不機嫌そのものだった。
「お前は馬鹿なのか」
「…はい?」
いきなり馬鹿とは何だ、馬鹿とは。
これでも頭はいい方で、テストでも毎回学年10位以内には入っている。
そりゃ、毎回1位を取る征十郎に比べたら馬鹿かもしれないが、世の中の平均で言ったら私は決して馬鹿な内には入らない。
そんな私の心情を察したのか、征十郎は「全く…」と呟きながら、ため息を一つついた。
…全く意味が分からないんですけど。
「もっと自分のことを自覚しろ」
「これでも自覚はしているつもりなんだけど…」
これだけ声を掛けられて、去年の帝光祭ではミスコンでグランプリをとった。
それで自覚がない、と言えば、もはやただの嫌味だ。
「いや、全く自覚が足りない」
そう言って征十郎は何故か私の両腕をつかみ、私の肩に自分の頭をコトン、と乗せてきた。
…んん?今何が起こっているの?
「頼むから、俺の目の届く場所にいてくれ」
そう囁かれて、私の鼓動は少し早くなった。
さらに顔が赤くなったのもわかった。