第12章 馬鹿とは何よ
とりあえず、全員の体調チェックやテーピングを終えた私は、練習をさっちゃんに任せて、無くなる前に、と新たにドリンクを作っていた。
去年もそうだったが、ゴールデンウィークと言っても昼間の気温は夏そのものだ。
去年の反省点も生かして今年はさらに多めの粉末にティーパックを持ってきていた。
「あ、帝光のマネージャーや」
声がして振り向けば、今日一緒に合同練習をしている中学の選手集団。
ちょうどドリンクも作り終わったので、会釈だけして冷水器を譲った。
「帝光ってバスケのレベル高いゆーけど、マネージャーのレベルも高いんやなぁ」
「ほんまや。めっちゃ可愛えな」
関西方面から遠征に来た選手なのか、聞きなれない関西弁で話す彼ら。
…なんか去年もこんなことがあった気がするんだけど、気のせい?
「俺ら、大阪から来てん。なー、名前なんて言うん?」
「彼氏おるん?良かったら連絡先教えてーな」
去年のアホっぽい高校生に比べたらこんなの可愛いものだ。
歳もおそらく同い年かもしくは一つ上くらいだ。
さらにここは施設内。全く問題はない。
「ごめんなさい。私、戻らないといけないの」
しつこく話しかけてくる彼らに営業スマイルを見せてその場を後にしようとした。
「えー?!なんでなん?ええやん、ちょっとくらい!」
「これも何かの縁やって!」
「こんな可愛え子前にして、帰すとかできひんわ!」
などと、彼らは口々に言う。