第12章 馬鹿とは何よ
「昨日も言ったけど、なんともないよー?」
「そうは言っても何かあってからじゃ遅いのよ?また今日も見るけど、少しでも違和感を感じたらすぐに言ってね」
「うんー。わかったー」
…と、それから次は…。
「本当に精が出るね。俺には何もないのかい?」
また周りをきょろきょろとし始めた私に征十郎がストレッチを続けながら言う。
私は、フロアに座る彼を見下ろしながら言う。
「征十郎は何の問題もないわ。どこの不調もないのに過度にケアをするのも良くないんだから、征十郎には何もしないのが一番なの」
「そうかい」
「あるとすれば…熱中症にならないようにこまめに水分補給はしてね。ただ摂りすぎるのもダメよ?」
「ハハッ。気を付けるよ」
征十郎は笑いながら言った。
「藍川っちー!俺には?俺にはないんスか?」
どこから湧いてきたのか駄犬が私たちの方へ走り寄ってくる。
「ない。以上」
「酷いッス!」
私は朝から耳がキーンとなりそうな駄犬の声を無視して次に指示を出す先輩の方へ向かっていった。