第12章 馬鹿とは何よ
「自分では気付けなかったのだよ。感謝するのだよ、藍川」
「何で上から目線なんだよ」
大ちゃんはまた笑いながら真ちゃんに言った。
「次は…」
「何だよ、まだあんのか」
「次はあっくんよ」
「藍川は本当に忙しいのだな」
「これが私の仕事だもの」
まだゴールデンウィークだと言っても、全中予選はあっという間に来てしまう。それまでに選手に怪我でもされては大変だ。
今のうちから用心するに越したことはないし、皆を万全のコンディションで試合に出すのが私の仕事だ。
「あ、いたいた。あっくん」
体育館の隅の方で征十郎と念入りにストレッチをするあっくんを発見し、私は彼らの方へ向かっていく。
「藍ちん、なーにー?どうしたのー?」
「あっくん、今日は腰の調子どう?」
そう、あっくんは昨日腰を痛めるほどではないが、私から見て少し違和感があった。
なので、私は昨日のミーティング終わりに、彼にアイシングとマッサージを施していたのだ。