第12章 馬鹿とは何よ
遠征二日目。
昨日のあれから、さっちゃんは夜寝るまで、テツ君の良さについて語りつくした。
私はただ「うん、うん」とだけ言って聞いていたが、最後に彼女は「まだわからないんだけどね!」とだけ付け加えて眠りについた。
わからないって、そこまでいったら恋をしたことのない私ですらわかるほど、大好きじゃない。…なんて思ったことはさっちゃんには内緒だ。
「テツくーん!おはよー!」
「おはようございます、桃井さん」
「テツくーん!もう汗かいてるよ。拭いてあげるね!」
「自分で拭きますよ」
「テツくーん!」
今日は昨日の反省点を踏まえて、他校との合同練習。
昨日のさっちゃんの話を聞いてから、彼女の様子を見ていると、確かにあからさまだ。…というより、昨日私に話したことで、何か吹っ切れたのか、アピールが凄い。
が、さっちゃんに言わせてみれば、まだ気持ちを確かめている段階に過ぎないらしい。
「…何だありゃ」
昨日の試合から大ちゃんの右肘の具合が気になっていた私は、昨日のうちにアイシングをさせ、今日はテーピングをして様子見をしようと、今は、大ちゃんにテーピングをしている最中だ。
大ちゃんはまだストレッチの段階であるにも関わらず、異常なまでにテツ君に付いて回るさっちゃんを流石に不審に思ったのか、私に問いかけた。
「…知らない」
そう、私は何も知らない。
そういうことにしてもらえないだろうか。
と、そこに真ちゃんが通りかかる。