第12章 馬鹿とは何よ
すると、彼女の口から出てきたのは思いもよらない人の名前だった。
「…テツ君」
「…は?」
私は今回二度目の、は?が口から出た。
まず、今まで『黒子君』と呼んでいたにも関わらず、一体いつから『テツ君』に変わったのか。
「テツ君って、黒子テツヤ君?」
さっちゃんはコクリ、と頷いた。
「へ、へぇ…。何があったの?ついこの間まで黄瀬とまでは言わないけど、似たような対応だったじゃない」
私が尋ねると、さっちゃんは両手を顔から離し、顔を真っ赤にさせたまま話し始めた。
「先週、青峰君たちとアイス食べにコンビニに行ったでしょ?」
「あー…、黄瀬の態度が一変した日?」
「うん」
あの日ね…。
私は征十郎と真ちゃんと一緒に帰る予定だったし、大ちゃんたちはいいとしても黄瀬と帰るのは嫌だったから、断ったんだよね。
「一緒にコンビニに行ったのは良かったんだけど、私、男の子たちの中に混じれなくて、結局ポツンってしてたんだ。アイスも食べれなくて」
「一緒にアイス食べに行ったんじゃなかったの…」
そもそもさっちゃんをひとりにして大ちゃんたちは何をしていたんだ。
「そしたらテツ君が、『僕、もういらないんで、これあげます』って言ってアイスのあたり棒くれたの」
「……」