第12章 馬鹿とは何よ
そんなことを考えながら、私はひとつため息をついて黄瀬に言う。
「なにか勘違いしてるようだから言うけど、私はあんたのことが本当に嫌いなの。でもあんたの才能は認めてるしその才能は絶対チームの役に立つとも思ってる。あくまであんたのためじゃなくてチームのために当然のことをしたまでのことよ。だからお礼なんか言われる筋合いはないし、こんなとこで油売ってる暇があったらもっと早く上手くなりなさい」
私がそう言うと、黄瀬は一瞬キョトンとした顔をしてまたすぐに笑い出した。
「藍川っちらしいッスね」
「褒め言葉として受け取っておくわ」
「褒めてるんスよ」
カラカラと笑いながら私の隣を歩く黄瀬に少々苛立ちながらも、こいつは素直なだけで根は悪くないのだと、黄瀬のことが少しわかったような気がした。
…まあ、別に分からなくても良かったのだけども。