第12章 馬鹿とは何よ
「さっきの『無冠の五将』が出てる試合、藍川っちが俺を出すように言ってくれたんスよね?桃っちから聞いたッスよ」
さっちゃんもまた余計な。
「コーチにも、今のうちに俺に実戦経験を積ませた方がいい、って言ってくれたって聞いたッス」
「別に」
いつものように素っ気なく返す私に、黄瀬はハハッと笑いながら続ける。
「俺、藍川っちから嫌われてるって思ってたから嬉しかったんスよ」
「あながち間違ってないわよ。私、あんたのこと嫌いだもの」
「酷いッスねー。俺にそんなこと言う女の子は藍川っちくらいッスよ」
「光栄ね」
私にハッキリ嫌いと言われても黄瀬は話し続ける。
「それでも藍川っちは、俺がもっと上手くなれるようにしてくれるじゃないッスか。しかも、それも毎回のようにちゃんと結果が出る。だから、俺本当に藍川っちのこと尊敬してるし、感謝してるッス」
ありがとうございます、と私に笑顔を向けながら言う黄瀬。
…あぁ、この顔を見て世の女の子たちは黄色い悲鳴をあげながら騒いでいるのか。
私には全く理解できないけど。