第12章 馬鹿とは何よ
「藍川っち!運ぶの手伝うッスよ!」
試合が終わり、外の冷水器でドリンクを作り、ひとり運んでいた私の元へ黄瀬がやってきた。
「いいわよ。ひとりで運べるから」
「いいから、いいから」
そう言って黄瀬は私の手からドリンクの籠を奪った。
「あのね…。いくらハーフゲームだからって、あんたまだ周りに比べて体力があるわけじゃないでしょ。少しは体を休めなさい」
私は呆れたように黄瀬を見て言った。
次の試合は三年生を中心に出す、とコーチは言っていたが、二年生が出ないとは限らない。
さらに私が、黄瀬には今のうちに実戦経験を積ませておいた方がいい、と言ったのもあって、おそらく次の試合も出ることになる。
「藍川っちのおかげで大分体力もついてきたし、このくらい大丈夫ッスよ!」
これはいくら言っても聞かないな、と私は諦めて黄瀬に持ってもらい、並んで歩いた。
「ありがとッス」
何の事だか知らないが、黄瀬はいきなりお礼を言い始めた。
「何のこと?」
私は黄瀬の顔を見ずに、いつものようにポケットに手を突っ込んだまま尋ねる。