第12章 馬鹿とは何よ
そして飛行機は2時間飛び続け、今回の目的地へ着陸した。
去年の5時間に及ぶ移動に比べれば、なんてことはなく、体は軽い。
「おい!コラ、黄瀬!待ちやがれっ!!」
これまでは大人しかった修ちゃんは、空港を出た瞬間に豹変。
鬼の形相で黄瀬を追いかけだした。
あまりの殺気に黄瀬も逃げ惑うが、主将の修ちゃんに敵うはずもなく、アッサリ捕まりシメられていた。
「藍ちーん。なんかいいことあったのー?すっげぇ嬉しそうな顔してっけど」
いつものように私に抱き付きながらあっくんは尋ねてくる。
「いい気味だわ」
「何のはなしー?」
抱き付くあっくんに餌付けをし、どうにか離れてもらい、修ちゃんと黄瀬の様子を遠くから眺めていた。
…少し前ならば、これは修ちゃんと祥ちゃんがやっている光景だった。
だが、最近は祥ちゃんに代わり黄瀬になっている。
当の祥ちゃんは今回の遠征には不参加。修ちゃんが来るように、と説得をしたようなのだが、祥ちゃんは結局来なかった。
少し変わってしまった光景に私は少し寂しくなった。