第12章 馬鹿とは何よ
ついに始まったゴールデンウィーク遠征。
今回は前々から聞いていた通り、移動は飛行機。
搭乗前に修ちゃんが小さく深呼吸をしているのを見て、私は隠れて笑った。
「主将、緊張しすぎッスよ!顔がいつもの三倍怖いッス!」
機内で修ちゃんの後ろに座る黄瀬が身を乗り出して生意気にもそんなことを言っていた。
いつもならその時点で確実に仕留める修ちゃんだが、流石にそんな余裕はないのか、少し睨みをきかせただけだった。
「主将って、飛行機ダメなんだね。なんか意外…」
私の隣に座るさっちゃんがもの珍しそうに修ちゃんを見ていた。
「修ちゃんは昔からよ。なんでも地に足がついてない感覚がダメなんだって」
「へぇ…、そうなんだ」
流石は従兄妹だね、と付け加えるさっちゃんを無表情でちらりとだけ見た。
この一年間で、私と修ちゃんが従兄妹だということはバスケ部内で散々いじり倒されてきた。
はじめの頃こそ、本気で嫌がっていたが、慣れとは怖いものである。