第10章 あくまで反対だからね
「赤司征十郎を主将にしてください」
職員室の前に着いた時、中から修ちゃんの声が聞こえた。
間に合わなかった。
一応、納得はしているつもりだったのだが、実際にそうなるとどうしたらいいのかわからなくなる。
「修ちゃん…」
中からは途切れ途切れながらもコーチと修ちゃんの会話が聞こえてくる。
「だめだ。二年生中心と言ったが、それはあくまで単純に戦力的な意味での話だ。スタメンを外れたとしても主将は主将だ。チームをまとめるのは今まで通りお前がやって問題ないはずだ。こうなることも予測した上でお前は選ばれたし、ちょっとやそっとで変えるほど帝光主将の名は軽くない」
コーチは尤もらしいことを言う。
だが、私は知っているのだ。
「わかっています。…ですが、赤司の資質は確実に俺以上です。あいつが主将をやった方が寧ろチームのためと思います。それに俺は試合中しばしば熱くなりすぎる時がある。それで皆を引っぱっている部分もありますがやはり性分としては少し違う気がするんです」
きっと伯父さんのことは言わないつもりなんだろう。
できることなら周りに心配などかけずに主将の座から降りようとしている。