第10章 あくまで反対だからね
私も最初の頃はテツ君に疑いの目をもって見ていたが、本人を前にして言ったことはないし、彼についてきちんと知ろうとした(結局あの時はわからなくて知ることを辞めたけど)。
なのに何も知ろうともせず、人を見下しているこいつは一体何様のつもりなんだ、と素直に思った。
「っしゃあ!」
練習が開始され、奴は確かに初心者とは思えない動きをする。
それを見ていた修ちゃんも感心したように奴を見ていた。
「本当に黄瀬君凄いね」
「そうね」
凄いし、才能があるのは認めるけど、いちいち癇に障る奴だ。
ただ、やはりマネージャーの仕事はしないといけないわけで、奴の動きに注意して練習を見る。
「…っ?!」
今、あいつ関口先輩と同じ動きをした?
見ていても周りの人は気づいていないようだ。
だが、私にはわかった。
「さっちゃん、黄瀬涼太に関して何か情報集めた?」
「え?…うーん。モデルやってるってことくらいかな…。あと、スポーツとかもやればすぐに出来ちゃうから今まで特定の部活には入ってなかったって。それがどうかしたの?」
さっちゃんはいつの間にか私以上に情報収集が早くなっている。
彼女からの情報をもとに、さらに奴を見ているとやはりそうだ、と確信した。
「黄瀬君は人の真似が上手いみたいね」
「真似?」
さっちゃんは首を傾げた。