第10章 あくまで反対だからね
「ねぇ聞いた?」
「何の話?」
放課後、私とさっちゃんは一緒に部室へ向かっていた。
隣を歩く私に彼女は問いかけた。
「二週間前に入部した黄瀬涼太君」
「もう一軍に上がってくるんでしょ?テスト、今日だっけ?」
「そうそう」
顔もいいし、スポーツもできる。
さらにモデルまでしているという彼、黄瀬涼太は、私たちが一年生の頃から有名だった。
その彼が何を思ったのか知らないが、つい先日バスケ部に入部したのだ。
「初心者だって言うのにもう一軍だなんて信じられない」
「まだ決まってないわよ。…とは言ってもほぼ確定だろうけど」
二週間前にみっちゃんたちから彼の入部を聞き、その三日後には「黄瀬君、すっごく上手いんだよ!」ということを聞いた。
初心者での上手い、なんてたかが知れているとも思ったが、修ちゃんに「偵察に行って来い」と指令を出された私は渋々、三軍の体育館に彼の様子を見に行った。
三軍の体育館の前には沢山の女の子が群がっていて、黄色い悲鳴を上げていた。理由なんて考えなくともわかる。
どうにか見れる場所を確保し練習を見ると、どれが黄瀬君なのかはすぐに分かった。