【恋の乱】才蔵さんと過ごす四季【章により裏R18あり】
第5章 夏〜甘い時〜前半
「痛っ…!」
あやねが顔をしかめ再度しゃがみこみ、左足首を押さえる。
「はずみで足をひねったようです。
不注意で申し訳ございません。」
申し訳なさそうにあやねが俯く。
「なんで謝るのさ。ちょっと見せて。」
あやねを川から運び、乾いた河原に座らせる。
ああ、少し腫れてる。
「動かせる?」
「うっ…」
痛みに顔を歪めながらも、足首はわずかに動かせるようだ。
「少し捻ったんだね。
まあでも骨が折れてなくて良かった。」
俺は自分の荷物の中から手ぬぐいを取り出す。
手ぬぐいを川で濡らし、それを腫れた箇所にあてがい、結ぶ。
「あと少しだから。
とりあえず応急処置だからね。」
そう言って俺はあやねを横抱きにし、馬のところまで運ぶ。
そしてあやねを馬に乗せた。
「才蔵さん…お手数をおかけします…」
「軽くひねっただけだから、数日もすれば治るでしょ。
まあでも、無理はしないように」
「はい…」
しおらしいあやねも可愛いな、と思いつつ馬に乗り目的地に向かう。
鬱蒼とした林を抜けると急に開けた場所に出る。
そこに俺が任務の時や、しっかり体を休めたい時に使う隠れ家がある。
「え?」
あやねが思わず声を上げる。
思ったより大きな家で驚いたらしい。
「てっきり仮住まいの小屋のような感じかと…」
「俺がそんなとこにお前さんを連れてくるわけないでしょ」