第4章 許されない罪 *Reiji
「........」
レイジはある所へ向かっていた
外には霧が立ち込め、辺りは月夜に混ざり余計に暗く感じた
海の見える小さな丘の上まで登る
足元は綺麗な芝が埋め尽くされていた
そして、レイジは丘の頂上にある大きな石の前で止まる
そこには
『Beatrix』
と掘られた名前と弔いの言葉が添えられていた
これは、レイジとシュウの母、ベアトリクスの墓である
「もう....あれから何年....いや、何百年経ったのでしょうかね」
あの日のことは、レイジにとって遠くて近い....そんな記憶だった
ベアトリクスは、元々それ程地位が高いわけではなかったが、その知性と気品さをかわれカールハインツの妻となった
事実、彼女の働きはこの家をいい方向へ導き、多くの富を手に入れた
その為、ほかの夫人との競争心も強く、長男であるシュウには多くの知識を与えていた
全ては....カールハインツに愛されるために....
「貴方は馬鹿な人だ
そんな事で父上が貴方を認めるはずが無い....
結果....貴方は大きな間違いを侵したのですよ」
ベアトリクスは、レイジの事を見ていなかった
次男だからと、あの穀潰しの補佐を努めろと
何度も、何度も言われ続けた
気づけばレイジは、もう取り返しのきかない所にたっていた
『満足....です....レイジ....
"ありがとう"』
死際、あの人は私に対し感謝の言葉を残し、安らかに死を迎えた
「ッ....!!」
レイジは唇を強く噛み、口からは血がつたる
安息な死など母上は迎えてはいけない!!
あの人は、もっと苦しむべきだった....!!
幸福な死など与えるつもりは無かったのに....ッ
感情的になり、胸を抑えるレイジに冷たい風が吹きかける
その風を通して、微かにヴァイオリンの音が聴こえてきた
レイジにはその正体が手に取るように分かった
ずっと聴いてきた
この忌まわしく、美しい音色を出せる者を私はこの世で1人しか知らない
『シュウ....』