第4章 許されない罪 *Reiji
「........」
シュウは分かっていた
レイジが何を感じ、何を恨み....何を思い悩みながら母親を殺したのか....どうしてあの村に火を放ったのか....
そう、全部分かってたんだ
けど、あの頃の自分は理解しようとしなかった....
だから、俺は全てを失い、何もかもどうでもよくなった
だけど....
「レイジ」
シュウは立ち上がり、後ろを振り返る
「何ですか」
そのまま、シュウはレイジの立つ小さな丘を登る
「俺が許せないならいくらでも恨めばいい
けど....」
シュウはレイジの瞳を真っ直ぐ見る
「俺から目を逸らすな
それで....また俺が間違って、全部から逃げ出した時....
お前が俺を"殺せ"」
「ッ....」
シュウはそう言い残してレイジの隣を通り過ぎる
「........」
レイジもまた恐れていた
シュウの目を見ると、あの頃の苦悩と自らが恐れた過ちを思いだす
きっと、シュウはそうすることで罪から目を背けさせない様にしたのだろう
「全く....残酷な人だ....
全部を見透かしたような、その態度がずっと気に入らなかったのですよ....」
自分を恨ませてでも、シュウはレイジを組み入れようとしている
彼はよく分かっているのだろう
自分達兄弟には、絆など無い
あるのは"憎悪"だけであると
レイジは思わずため息をつき、眼鏡を取る
顕になった瞳に浮かぶ、"兄"の幻想に苦笑を浮かべる
「....ええ、殺して差し上げますよ
"シュウ"」
小さな丘に風が吹き付ける
ベアトリクスの墓には
最愛の男により添えられた、白百合の華が流れるように揺れ出した
もうヴァイオリンの音は聴こえない
だが、その代わり、丘には誰にも聞こえない音が響いていた
謝罪の賛美歌がーーーーーー