第3章 3話
少女を抱え走り出した少年は街外れの森の茂みの中、一本の大きな木の前で立ち止まった。
辺りを見渡し誰もいないのを確認すると、持っていたナイフで手を軽く傷つけた。
「ったぁ。…ほんと何度やってもこれだけは慣れないんすよねー。」
その手を大きな木の幹の穴にゆっくり近づけ、滴る赤い血を染み込ませた。
すると、木が二つに避けるように別れ地面に大きな穴ができた。少年はその穴に吸い込まれるように入って行った。
木の中は滑り台のようになっており、するすると下に落ちて行くと辺りが少し明るくなり外へ出た。
少年の目の前に大きな鉄で出来た門が立っていた。
彼は家に軽く手で触れると大きな門が開かれさらには奥の大きな屋敷の木の扉さえも開いた。