Love Story~たくさんの 恋物語~【黒子のバスケ】
第1章 The signs of LOVE 【実渕 玲央】
とにかく走った。
その場から遠くに遠くに離れたくて、全力で走った。
ドンッ
夢中で走っていたら誰かにぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさい」
そう言って立ち去ろうとすると、ぐいっと腕をつかまれた。
「優奈、どうしたんだ?」
「あ、赤司く・・・ん?」
やだ・・・涙でぐちゃぐちゃなこんな顔、見せられないよ。
「い、急いでるの!!本当にごめんね!」
私はそう答えて、赤司くんの方は見ずにその場から走り去った。
屋上までやってきた。
ここなら誰もいないよね。
「うっ、うっ・・・うわぁぁ~ん」
もう、なんなのこれ。
わかってたじゃん、こんなの・・・。
そう思っていても、涙は止まらない。
そして私は思いっきり泣いた。
最後の方にはもう涙は出なかった。
屋上でひとしきり泣いた私は、帰り支度をする為に教室へ向かっていた。
今日は部活がない日で本当に良かった。
噂では聞いていたけど。
実際に自分の目で見るってかなりショックなんだなぁ・・・なんて思いながら歩いていると、正面から赤司くんが来るのが見えた。
「気まずい・・・」と思い、とっさに隠れては見たものの、すぐに見つかってしまう。
「優奈・・・そんな所に隠れていても僕にはばれているよ」
アハハ・・・
赤司くんには敵わないや。
「はい、すみません」
そう言って出ていくと、スッと赤司くんの手が私の頬に触れたのだ。
「泣いていたんだね。何があったのかはあえて聞かないが、ため込むのはよくないな。優奈には頼もしい『親友』がいるだろう?」
その言葉にびっくりしながらも
「うん、そうだね」
と私が言うと
「さあ、今日はもう帰るのだろう?送っていこうか?」
と赤司くんは言ってくれた。
「ううん、大丈夫。一人で帰れるから。ありがとう!」
そう私が答えると
「わかった。僕も玲央も小太郎も根武谷も、みんな優奈の味方だからね。元気を出すんだよ」
そう言って優しく微笑み、赤司くんは去って行った。
「ありがとう」
私は、もう一度そう呟いて学校を後にした。